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横浜地方裁判所 昭和60年(わ)3926号 判決

本籍

埼玉県川口市大字安行領根岸二二八二番地の六八

住所

右同所

会社役員

井山健一

昭和一四年一月二五日生

本籍

埼玉県与野市大字上落合六三九番地

住居

同市大字上落合六六三番地一

会社役員

井山一男

昭和二四年二月三日生

本籍

埼玉県与野市大字上落合七七二番地

住居

右同所

会社役員

井山正一

昭和一四年七月二五日生

右の者らに対する各相続税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官寺坂衛出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人井山健一を懲役一年に、被告人井山一男を懲役六月に、被告人井山正一を懲役一〇月及び罰金三五〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人井山正一においてその罰金を完納することができないときは、金二〇万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人らに対し、この裁判の確定した日から各二年間、被告人井山健一、被告人井山一男についてはその刑の、被告人井山正一についてはその懲役刑の各執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人井山正一は、井山いくの死亡により同人の財産を相続した井山ハル、井山和栄、井山剛之の各相続税申告の代理人であったもの、被告人井山一男、被告人井山健一は、金田こと金義信、二宮啓、小島葵、庄司孝英、俵利美、新開一史らと共に被告人井山正一から右井山ハル、井山和栄、井山剛之の各相続申告について相談を受けていたものであるが、被告人井山正一、被告人井山健一、被告人井山一男、小島葵、庄司孝英、世俵利美、新開一史、金田こと金義信、二宮啓と共謀のうえ、右井山ハル、井山和栄、井山剛之の各相続税につき架空保証債務を計上して課税価格を減少させる方法により相続税をまぬがれようと企て、昭和五九年四月二日、埼玉県浦和市常盤四丁目二番一九号所在の浦和税務署において、同税務署長に対し、被相続人井山いくの死亡により同人の財産を相続した右井山ハル、井山和栄、井山剛之の正規の相続税課税価格は別表「正規の相続税課税価格」欄記載のとおり合計六億六一五八万四〇〇〇円であったのにかかわらず、被相続人井山いくには宍戸三男に対する四億八〇〇〇万円の保証債務があり、これを右井山ハル、井山和栄、井山剛之において別表「保証債務額」欄記載のとおりそれぞれ負担することが確定したので、それぞれの所得財産の価格からこれを控除すると右井山ハル、井山和栄、井山剛之の相続税課税価格は別表「申告相続税課税価格」欄記載のとおり合計一億八三七五万八〇〇〇円で、それぞれ遺産にかかる基礎控除額を控除すると右井山ハル、井山和栄、井山剛之の相続税額は別表「申告相続税額」欄記載のとおり合計五四一五万九六〇〇円である旨の虚偽の相続税申告書を提出し、もって、不正の行為により別評「正規の相続税額」欄記載のとおり右井山ハル、井山和栄、井山剛之の正規の相続税額合計二億六〇七七万七一〇〇円と右申告相続税額合計との差額合計二億六六一万七五〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人井山健一、被告人井山一男、被告人井山正一の当公判廷における各供述

一  被告人井山健一(昭和六〇年一二月三日付、同付一八日付、同付二〇日付)、被告人井山一男(同付一四日付、同月一九日付、同月二一日付二通)、被告人井山正一(同月一二日付、同月一三日付、同月一七日付、同月二〇日付二六丁のもの、同月二一日付)の検察官に対する各供述調書

一  小島葵(同月二日付、同月九日付一五丁のもの)、庄司孝英(同月一一日付、同月一四日付、同月一七日付、同月二一日付)、俵利美(同月一二日付)、新開一史(同月一一日付、同月一二付)、金田こと金義信(同月二一日付)、二宮啓(同月二〇日付二通、同月二一日付)の検査官に対する各供述調書

一  井山和栄の検察官に対する供述調書及び大蔵事務官に対する質問てん末書

一  市山ハル、井山剛之、近藤なう、安西ケイの大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官各作成の保証債務調査書、有価証券調査書、未収地代調査書、土地調査書、公訴公課調査書

一  押収してある相続税の申告書綴一綴(昭和六〇年押第七二六号の5)、相続税の申告関係書綴一綴り(同押号の6)、遺産分割協議書、領収書綴一綴(同押後の7)

(法令の適用)

一  罰条

被告人らの判示所為はいずれも刑法六〇条、相続税法六八条(被告人井山正一につき、さらに相続税法七一条一項)

二  刑種の選択

被告人井山健一、被告人井山一男につき、いずれも懲役刑を選択

被告人井山正一につき、懲役と罰金を併科

三  労役場留置(被告人井山正一につき)

刑法一八条

四  懲役刑の執行猶予

刑法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

昭和六一年五月二六日

(裁判官 白神文弘 裁判長裁判官斎藤昭は転補のため、裁判官武田昌邦は退官のため、署名押印することができない。裁判官 白神文弘)

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